感覚統合療法とは、
アメリカの作業療法士アンナ・ジーン・エアーズによって提唱された療法。
人が何かを行うとき、様々な情報を脳が処理しています。
例えばピアノを弾くのであれば
耳で部屋全体の音を聞き、
そこからピアノの音だけを聞きとり、
腕と手首を持ち上げ
鍵盤の固さをイメージして
指を狙った鍵盤だけを押すようにして
音を出します。
その際、楽譜を見ていれば
目は楽譜を見ていて、
あるいは時々鍵盤を見たりして
演奏し続けているわけです。
こうした様々な情報処理を行うのが人間の脳の仕組みなのですが、
この情報処理につまづきがある場合、行うべき行為がうまくいかなくなることがあります。
例を挙げると
授業中座っていられなくてユラユラ体を動かしてしまったり、
立ち歩いてしまう子がいて授業の内容をなかなか聞いていられない子がいるとしましょう。
その原因は
前庭感覚と固有感覚の連動が未発達なため、
硬い椅子に座っているのが困難なため、身体を絶えず動かしてしまい、
身体が辛いから先生の話を聞いていることが困難で、
挙句に椅子から離れてしまうという可能性が潜んでいます。
(他の可能性もあります。)
その場合、とるべき方法は
集中して座りなさい!
と声掛けすることだけではなく、
例えば柔らかい小さめのボールを用意してあげて、
それをお尻の下に置いて座ることで体幹を鍛えつつ、小さく揺れることで座れる時間を長くしてあげたり、思い切って後ろの席にしてスタンディングデスクを取りいてれあげたりすること
が一つの解決策になります。
その状況の解決なくして、勉強や練習のことに目を向けても良い結果は結びにくくなります。
上記は発達障害がある子どもの症状を例にあげましたが、
近年ピアノ教室関係者の中で、子どもの体幹についての困りごとがよく例に上がっています。
椅子にまっすぐ座れない、何度言っても足台に足を置けない、ドの場所が自分で探せないなど、
教室での悩みとして先生同士で対応策を話し合っていますが難しいことが多いようです。
感覚統合の考え方が有用なのは発達障害の診断を持つ子供に限りません。
塾や習い事や遊具の減少などで昔より運動量が減っている現代の子供達は
以前ならみんな当たり前にできたことが難しいことが多々あります。
ある意味当然なんです。その発達を促す経験が減っているのですから。
そこで必要なことは原因を多角的に考え、
必要な感覚刺激を提案したり、レッスンの中で取り入れることで、問題を解決に導くことです。
音楽のレッスンと関係のないことを提案してくるので一見遠回りに見えるかもしれませんが、感覚機能の正常化はゆくゆくはその人の能力の底上げを図ることができる大事なプロセスなのです。